いわゆる日本の文語体、古いかなづかいの小説です。文豪、幸田露伴が約100年前に発表した「五重塔」です。
それを聞いて、あ、やめようと思ったあなた。
もしくは、開いてひと目字面を眺めてみたけど、ちんぷんかんぷんで訳がわからなそうだ、やっぱりやめようと思ったそこのあなた。
どうか、だまされたと思って、最初の1ページ、それがだめなら最初の10行、我慢のつもりで読んでみてください。
わからないからといって、意地を張って、辞書を引っ張り出して来て、無理やり言葉一つ一つを理解しようとするのも、どうか、おやめください。
わからないままでかまいませんので、どうか、どんどん読み進めてみていただけませんか?
日本文学、ここにあり。
同時に、日本の言葉、ここにあり。
私が感じたそのことだけを、お伝えしたくて、紹介しました。かくいう私自身も、すべてきちんと理解しているわけではないこともお伝えします。何せ、100年も前の言葉で、しかも話し言葉ではなく読み物用に特化された当時の言葉で書かれているわけですので、わからないことを恥じる必要はもちろんないのです。
楽しくて、リズムにあふれた言葉の波。
日本語が本来持っていた、美しい言葉のリズム。そのリズムの波が、押し寄せてはまた押し寄せる。わかったようなわからないような、でもそのままその波にのまれのまれて、おなかの中から喉元まで、たっぷり美味しい言葉に浸りきるような、そんな感覚になります。
現東京旧江戸の、谷中感応寺五重塔を建てた人々の話です。最後の最後に、施主のお坊さん(上人)の放った言葉、もしその言葉まで、運よく行きつくことができた時、私がここまでお勧めする理由が必ずわかってもらえる。そう確信します。
申し訳ないのですが、外国の読者の方々には、現代語としての翻訳版しかないようです。今日はお願いばかりで申し訳ないのですが、ぜひ日本語を少しでもかじっていただき、その雰囲気を原語で体感していただけたら、望外の幸せです。
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